甲状腺未分化癌と甲状腺乳頭癌について:わかりやすい説明

甲状腺の役割って何?

甲状腺は、首の前面に位置する小さな臓器で、蝶のような形をしています。見た目は小さいですが、その働きは非常に重要です。甲状腺は、体の代謝を調整するホルモンを分泌する役割を担っています。具体的には、甲状腺ホルモン(T3およびT4)を生成し、全身の細胞にエネルギーを供給し、体温調整、心臓の鼓動、消化機能、さらには精神的な安定にも影響を与えます。

例えば、甲状腺ホルモンが不足すると、エネルギーが不足し、体がだるく感じたり、体重が増加したりすることがあります。逆に、ホルモンが過剰になると、エネルギーの使い過ぎで、体がオーバーヒートし、動悸や体重減少、神経質になるといった症状が現れます。このように、甲状腺は私たちの体の「エネルギーコントロールセンター」として機能しているため、その働きが正常でない場合、健康に重大な影響を与える可能性があります。

甲状腺にできるがんには、甲状腺乳頭癌や甲状腺未分化癌などがあり、それぞれ異なる進行速度や治療法が存在します。特に、甲状腺乳頭癌は早期発見で完治する可能性が高い一方、甲状腺未分化癌は進行が早く、発見時には治療が難しい場合もあります。それでは、それぞれのがんについて詳しく見ていきましょう。

甲状腺乳頭癌とは?

甲状腺乳頭癌は、甲状腺がんの中で最も一般的なタイプで、全甲状腺がんの約80%を占めます。乳頭癌は、名前の通り、甲状腺の細胞が乳頭状(小さな突起状)に増殖することから名付けられました。このがんは比較的ゆっくりと成長し、早期に発見されることが多いのが特徴です。また、他の臓器への転移があっても治療がしやすく、予後が良好なケースが多いため、早期治療によって完治する可能性が非常に高いです。

症状と診断
甲状腺乳頭癌は、初期段階では自覚症状がほとんどありません。通常、首にしこりができたり、触った際に硬いしこりが見つかることで、発見されることが多いです。まれに、声がかすれたり、呼吸や嚥下(飲み込み)に違和感を感じることもありますが、これらは進行してから現れる症状です。

甲状腺乳頭癌の診断には、超音波検査や細針吸引細胞診(FNA)が用いられます。超音波検査で甲状腺に異常が見つかった場合、FNAでがん細胞の有無を確認することで確定診断が行われます。

治療法
甲状腺乳頭癌の治療は主に手術が行われます。甲状腺全体または一部を切除する手術(甲状腺切除術)や、リンパ節への転移がある場合はリンパ節切除術も行われることがあります。手術後は、ホルモン補充療法が必要になることが多く、切除した甲状腺の機能を補うために、甲状腺ホルモン薬を服用します。

また、甲状腺乳頭癌は放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療)に非常に敏感で、手術後に残ったがん細胞を消滅させるために使用されることがあります。早期発見、適切な治療を行えば、長期的な予後は非常に良好です。

甲状腺未分化癌とは?

甲状腺未分化癌は、甲状腺がんの中でも最もまれで、全甲状腺がんの1~2%を占めるにすぎません。しかし、このがんは非常に進行が早く、治療が難しいことで知られています。未分化癌は、甲状腺細胞が急速に異常な形態に変わり、他の臓器やリンパ節に短期間で広がるため、早期に発見されることが極めて重要です。

症状と診断
甲状腺未分化癌は、乳頭癌とは異なり、急速に進行するため、症状がすぐに現れることが多いです。急に首に大きなしこりができ、痛みを伴うことがあり、しこりが急速に大きくなる場合は要注意です。また、声のかすれや呼吸困難、飲み込みの障害なども、未分化癌の進行に伴う症状として現れます。

未分化癌の診断には、甲状腺乳頭癌と同様に超音波検査や細針吸引細胞診が用いられますが、発見時には既にがんが進行している場合が多いため、迅速な対応が求められます。発見の遅れは予後に大きく影響を与えるため、症状に気づいたら早急に専門医の診察を受けることが重要です。

治療法
甲状腺未分化癌の治療は、乳頭癌とは異なり、手術が必ずしも有効ではありません。がんが広範囲に広がっている場合、手術では取りきれないことが多いため、放射線療法や化学療法が主に行われます。また、進行が非常に早いため、治療計画は迅速に進められる必要があります。

未分化癌は、予後があまり良くないがんですが、治療の進歩により、症例によっては放射線療法や新しい治療法によって症状の進行を抑えることが可能になってきています。早期発見が何よりも重要であり、首に急な異常を感じた場合には、速やかに専門医を受診することが推奨されます。

どちらのがんも早期発見が重要


甲状腺乳頭癌と甲状腺未分化癌は、それぞれ異なる進行速度や治療法を持つがんですが、いずれも早期発見が非常に重要です。特に甲状腺乳頭癌は、早期に発見されれば完治する可能性が非常に高く、予後も良好です。一方、甲状腺未分化癌は進行が非常に速いため、発見が遅れると治療が難しくなります。いずれの場合も、首にしこりができた場合や、声のかすれ、呼吸困難といった症状が現れた際には、すぐに専門医の診察を受けることが推奨されます。

超音波検査や血液検査、細針吸引細胞診といった検査を行うことで、甲状腺がんは比較的早期に発見することが可能です。定期的な健康診断や自己チェックも有効ですので、特に甲状腺疾患のリスクがある方や家族歴がある方は、注意深く体調を管理することが大切です。

 

当院でのサポート

当院では、甲状腺乳頭癌および未分化癌に関する専門的な診断と治療を提供しています。経験豊富な内分泌内科の専門医が、患者様に最適な治療プランを提案します。

専門的な検査
甲状腺がんの早期発見に向け、超音波検査をはじめとする詳細な検査を実施しています。特に、甲状腺乳頭癌や未分化癌の診断には、高度な検査技術が必要です。当院では、必要に応じて専門機関を紹介します。


安心のフォローアップ体制
甲状腺がんは治療後も定期的な経過観察が必要です。当院では、術後や治療後も患者様が安心して生活できるよう、継続的なケアを提供しています。甲状腺に関する不安や症状がある方は、ぜひ当院にご相談ください。

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監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

**資格・専門性**
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
- 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

 

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